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FalseIslandという定期更新型ゲームに参加中の、リコ・メルシェ(1227)の日記の保管とかPLの戯言とかです
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丸月星の日 今日の朝日は何処から昇る
(記録者:グラスレイ)



 猫が鳴く。
レィレが鳴いて、気怠そうにあくびを一つした。
そして丸くなったまま、また俺の指先を細めた目で追っていく。
時折尻尾をぱたぱたと動かす以外、まるで動くことが面倒だというように硬直している。
この寒さの中だ。このまま冬眠してしまうのではないかという不安さえ浮かんでくる。
風邪を引いたらいけないので布を被せてやったら、器用に尻尾で放り投げられた。何故だ。

 地面が波打つ。
その波が収まると、そこからガルドンが顔を出す。
とりあえず、顔を合わせる度に雑魚っぽいというのはやめて欲しかった。何だか自信がなくなる。
しかし、なんど頼んでもその口癖は未だ直る気配がない。
口癖と言うよりもまず、その性格を直さないとそのうち痛い目に遭うんじゃないだろうか。心配だ。

 それにしても、彼が地面の中でもサングラスを付けるのには一体どういう意味があるのだろう。
この遺跡にしろ、洞窟や長いトンネルの中、地下の秘密基地にしろ、
地面の下に作られた場所は太陽の光が入りにくい為に暗くなる。
そういう所へ行くときにはランプや蝋燭と言った光を出す物は必需品である。
それらがないと自分の手の輪郭さえ見えないからだ。
だというのに、彼はサングラスをかけている。
 サングラスというのは誰でも分かるとおり光を遮る物だ。
昼間の眩しすぎる太陽の光から、感動的な夕日に神秘的な月光まで。
どんな光だって容赦なく遮るのがこのサングラスだ。
だが、それは光のある場所で初めてその効果を発揮するもののはずだ。
地面の中という暗がりの中で、それを掛ける必要はない。
それでもなお、ガルドンがサングラスを掛けるのには何か意味があるのだろうか。
 まさか、そういうことなのか。
地面に潜ったとたん、あいつの体の節々から眩い光が吹き出し、辺りの地中を照らすのか。
その光があまりに眩して自分も被害を被るため、
サングラスを掛けてどっこいどっこいにしてるのだろうか。
それならば彼がサングラスを掛けるのも納得できる。
自分の出す光で自分の目を焼いてしまっては元も子もない。
地中でもサングラスを掛けなければいけないのはそういうことだったのか。
 だが、それだけ強力すぎる光だ。
それを使えば、きっと相手を怯ませるどころじゃ終わらない出来るはずだ。
表面上での態度だけであまり高く評価をしていなかった俺は、何て馬鹿だったのだろう。
こいつは、口だけではなく実力も十分に持ち合わせていたのだ。
今日からはガルドンが突然光り出さないか注意することにしよう。危険すぎる。

 時折恐怖心を抱きながらも、
そんな感じで今日はのんびりと時が流れている。
今日の移動は目の前に見える壁の向こうへ回り込むだけで良い。
そのため、俺達には少しの間休憩をする余裕が出来たのだ。
これがもし森や山の中ならばそうそう気も抜いていられないが、
こんな見晴らしの良い平原だ。簡単には動物達から奇襲されるはずがない。
そんな精神的な余裕からも、俺達はここが遺跡の中であることを忘れるぐらいのんびりしている。
 それにしても、この二匹は何のために俺についてきたのだろうか。
彼らとの出会いは戦いの中だった。
一度は自分の敵となった者に付き従うのだ。そこに何の理由もないはずはない。
 例えば、強者に付き従うというのは、弱者が身を守る最も簡単な手段だ。
その強者が余程残酷でない限り、自分の身はそいつに守ってもらえる。
だが、この遺跡で俺に付き従うのが身を守ることに繋がるだろうか。
遺跡の中を探せばもっと強い生き物はいる。
外からやってきたモノだけでなく、
遺跡の中に凄んでいる者の中にも俺を遥かに凌ぐ実力を持つ者は多い。
そいつらに付き従っていれば、当面の安全は確保できるのではないだろうか。
 とはいえ、彼らはこの遺跡の中で生活してきたのだ。
遺跡の中で出来る食物連鎖というものもある。
強者が自分の天敵であるということもあるのだ。
となると、戦いに敗れて喰われなかった、と言う事実から俺についてきた可能性はあるかもしれない。
 だが、どうもしっくりとこない。
自分と全く姿形の違う生き物に付き従うだろうか。
俺は自分より強いからと言って象の後ろを歩こうとは思わない。
そこは彼らだって同じではないだろうか。
何か別の理由は歩きがする。なるほどと納得できるような、何か。

 まさか。ひやりとした気配に視線を上げて彼らを見てみたが、何ら変わった様子はない。
レィレは毛繕いを始めていて、ガルドンは柔軟体操に夢中だった。
 だが、こんな彼らも腹の中では何を考えているか分からないのだ。
もしかしたら今も虎視眈々と俺の首を狙っているのかも知れない。
彼らの大きさからすれば、俺を食べるだけで何日かは過ごせるだろう。
もし今の彼らにそんな気はなかったとしても、これからどうなるかなんて誰も知らない。
もしかしたら、この先あんまり親密になりすぎたために、
そういった喰うか喰われるかのイケナイ関係に発展する可能性もゼロではないのだ。
考えただけでも恐ろしい。
俺の頭は、どこぞの愛と勇気しか友達になってくれないヒーローのそれとはちがう。
千切って食べてもらうなんてとんでもないことだ。

 俺は、何をそこまで必死に疑っているのだろう。これはまさかの話なのだ。
予想した出来事がそのまま起こるなんて人生の中では滅多にない。
サイコロのように確立された確率なんてないからだ。
目の数どころか、面の数さえいくつあるのか分からないのに。
彼らが俺を喰うか喰わないか以前に、俺を狙っているのかいないのか、
そもそも人間を喰うのか食わないのか。
事象なんていくらでも浮かべることが出来るというのに、そもそもそこから予想するなんておかしな話だったのだ。
 結局の所彼らがどうして俺についてきたか、なんて考えたところで意味はない。
少なくとも、彼らは俺についてきていて、俺の味方になっている。今はそれだけで十分だ。
それならば今の間だけでも彼らを信じよう。
彼らの貢献に答え、俺も彼らが戦闘で傷つかないように全力で戦おう。
それが、俺が選べる一番適当な選択肢なのだ。














 嫌な予感がした。
こんな予感は今までにも何度か経験したことがあった。
俺だって無意味に冒険者として生きてきたわけではない。
長年の経験で培ってきた勘というものはしっかりと備わってしまっている。
これもそんな勘の一つであるはずだ。
 俺がこんなものを感じるときは決まっていなくなるのだ。
俺の周りの、誰かが。
人が消えていく様をあまりに見過ぎたためなのか、
いつからか俺はそんな前兆を気づくことが出来るようになっていた。
気づけると言っても予知や予言のような確かなものではない。
本当に、なんとなく。そう言ったレベルなのだ。
だから分かるからといって防げると言うわけではない。
もしかしたら、俺は何処かで仲間を失うことに怯えているのかも知れない。
片手で数えられるほどだが、こんな予感を感じる者に出会ったことはあるのだが、
そいつらの場合は露骨にその予感に怯えていたからだ。
これはそんな俺達に覚悟を決めろと言う、神からのお告げなのか。
何にせよ危険が舞い降りてくるのは間違いない。
 だが、今までそれが感じられたのは、例えば大きな戦の直前や、危険な仕事の間。
そんな誰かがいなくなってもおかしくない状況で現れたものなのだ。
見た目にはのんびりとしたこんな状況で、いきなりそんな何かが起こるのだろうか。
いや、こんな遺跡の中だ。一体どんな敵がいるのか全く予想が出来ない。
 自分の出来る限りで感覚を尖らせてみた。
すると、確かに何処かから見られている感じはする。
先程はレィレが日記帳を見ていたが、それではない。
先程俺が日記を一度書き終えたときに、いつものようにふらりと消えてしまったからだ。
しかしいくら尖らせても場所が特定できない。
唯一の救いは、今はまだ敵意がなさそうだということだろうか。
単純にこちらを見ているだけのようだ。
俺だってあちらに敵意があることが分かればこんな悠長に日記なんて書いていられない。
敵意を完全に隠せるような強者が俺を狙っているとも考えにくい。
俺が感じた予感は、この視線の先にあるのだろうか。
それにしてはあまりにも、視線に危険がなさすぎる。
かといって、この視線が予感と無関係だと言っても良いのか。
 いくらか悩んでみたが、はっきりとした答えは出そうになかった。
一体何が、何処から俺を見ているのか。
 ともかく気を引き締めていこう。
何が起こるか分からないなら、何が起こっても良いように警戒しておけばいいだけだ。
 しかし俺の予感が当たるとすれば、危険にさらされるのは一体誰なのか。
レィレか、
ガルドンか、
それとも俺自身なのか。
もう一度俺は見える範囲にその視線の主がいないか見回してみた。
しかし、遺跡の中に広がる闇の先には何も捉えることが出来なかった。
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