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FalseIslandという定期更新型ゲームに参加中の、リコ・メルシェ(1227)の日記の保管とかPLの戯言とかです
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逆フェバ日記。の、つもり。

 騎士というのは、たとえ女性であっても、お洒落に疎いという印象があるらしい。
例えば普段着が地味だとか、むしろ普段着も鎧ばっかりだとか、
開き直って騎士がお洒落なんて邪道だなどという者も確かにいた。
それはそれでその騎士の信じる道なのだから、私に文句を言う権利はない。
だが、私の頭は鋼ほど硬くはない。
騎士だって、少しぐらいお洒落に興味を持っても構わないじゃないか。

「ねぇ、シャルもそう思うでしょ?」

 その真っ白で、さらりと流れる毛を右手で撫でながら、私はシャルロットに同意を求めた。
彼女の嘶きはきっと肯定。

「それじゃぁ、シャル、暫くじっとしててね」

 今、私の右手には白い髪の束が握られている。
しかしそれは彼女の毛ではない。
 この島にはあらゆる地方から人間が集まる。
そのため、一歩踏み出せば異国の文化を知ることは容易なのだ。
 エクステ。
店の主人はそう言った。
私の知識では到底出来ない髪型も、この技術を用いれば簡単に出来る。
要するにシャルロットの髪にこの髪の束を付け加えるのだ。
 私が握っている髪の束は、くるくると螺旋を描くように巻かれている。
そう、縦ロール。
ストレートのシャルロットも魅力的だが、たまには縦ロールの乙女も見てみたい。
普段とは違う彼女の姿も、きっと和むに違いないはずだ。
 店の主人から装着の手順は聞いている。
シャルロット自信の髪に、その髪の束を編み込んでいき、そして糸で止める。
うん、頑張れば何とかなるものだ。反対側にも縦ロールをつけて、完成。

「……シャル。シャルロット!」

 ただ、簡単の言葉しか喉の外には出なかった。
あらゆる感動が頭の中に浮かんだが、それを言葉にすることが出来ない。
それほど縦ロールになった彼女は素晴らしかった。もちろん元も素晴らしいが。
彼女が内に秘めていた気品が溢れ出して、神々しささえ感じられる。
素晴らしい。縦ロールというものを考えついた人には、ぜひとも拍手を送りたい。

 そうだ、もう少しいろんなお洒落を織り交ぜてみよう。
髪型を変えただけでこれだけ綺麗になるのだ。
化粧などをしたらどうなるだろう。
 しかし残念なことに、私の身の回りには口紅などの類の化粧品はない。
化粧をしたところで戦闘で汗をかけば崩れてしまうし、
遺跡外だからと言って何時戦闘になるとも分からない。
騎士自身はいつでも戦える格好をしているべきなのだ。
だから、化粧品などは持っていない。
 それに何よりも、私自身を綺麗にするぐらいなら、
その時間をシャルロットを愛でることに費やした方が良いに決まっている!

 しかし困った。シャルロットはまだまだ綺麗になるはずだが、そのための道具がない。
どうしたものかと部屋を見渡すと、机の上にいくつかの丸い棒が立てられているのに気づいた。
長さは私の手の平程度、太さは親指より少し大きいだろうか。
それはマジックペン、と呼ばれる異文化の筆記具だった。
 あぁ、オリフェンドールは信じる者を裏切らなかったのだ!
そのマジックの中に、赤い色をしたものがあるではないか。
それで手の平をなぞってみると、赤い線が肌に現れた。
口紅の代用品とするには打って付けだ。
 何やらシャルロットがそわそわしているが……

「シャル。変化は怖いものかもしれない。でも大丈夫よ。
 あなたなら間違いなく綺麗になるから」

 シャルロットを押さえつけながら、私はそのマジックで彼女の唇をなぞった。
 彼女は時折とてつもない行動力をみせることがある。
しかし普段は物静かで、彼女だけではなかなか一歩を踏み出そうとしない。
だから私が彼女の背に乗り、導く必要があるのだ。
 シャルロットが暴れるので少し手こずったが、何とか口紅は引けた。
そうだ、色的にも合っているからこれで頬紅も代用してしまおう。

 うん、我ながらなかなか上手い。
赤い色が印象的で、少々目立ってしまうのが欠点か。
だがしかし、そんな欠点は、私が彼女をガードすれば何ら問題ではない。
 美しくなった彼女の姿を見ていると、自然と鼓動が早くなっていくのが感じられた。
この姿を私の網膜だけに焼き付けておくのは勿体ない。
そうなれば、私たちがやるべきことは一つ。

「さぁ、この格好で遺跡外を一周しよう!」

 そういって、私は彼女の背に鞍を乗せた。
手綱も取り付けようか迷ったが、新たな彼女の魅力は顔にある、取り付けるべきではないだろう。
別にそんなものが無くとも、彼女との意志疎通は可能だ。

「行くぞシャルロット! あの広場の中心で決めポーズだ!」

 今になって思えば、この時の私はあまりに興奮しすぎて、彼女の言葉に耳を傾けることを忘れていたのだろう。
私がシャルロットに飛び乗ろうとすると、彼女は突然暴れだして吠えるかのように嘶いた。
それに驚いた私は彼女の背に乗り切ることが出来ず、そのまま振り落とされてしまった。
落ちていく私の目に、開けられたままのドアから飛び出して行く彼女の尻尾が映った。
その尻尾がドアの向こうへ逃げ去ったと同時に、私の体に鈍い痛みが走る。

「どうして……どうして逃げるの!? シャルロットー!」

 そのショックに受け身を取ることも出来ず、ただ絶望に打ちひしがれながら彼女の名を呼んだ。
あの距離なら、彼女を呼び戻す命令を出せばよかったのに。
そんなことも忘れて、ただ叫んだ。

「誰か……誰かその馬を止めてー!」


 シャルロットが、縦ロールも、口紅も頬紅も洗い流して帰ってきたのはそれから数時間後。
結局、私は全ての絶望を忘れて、水滴の滴る彼女の姿に魅了されたのだった。
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