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復讐の心は何を殺すのか (記録者:ガルドン) (このページはくしゃくしゃで、所々破れている)
赤い髪がいつもごそごそとやっているかと思えば、何だこんなモノだったのか。
あいつの姿からは日記を書くなんてなかなか想像できなかったな。 斧を使う奴なんて、脳味噌まで筋肉かと思ってたが、こんな奴もいるんだなぁ。 しかしそれでも斧に日記は似合わねぇな。 斧を背負いながら日記を書くとか滑稽すぎる。 日記ってのは普通もうちょっと学のありそうな奴が書くもんだろ。 単純な記録だったり、その日の所感だったり。 勉学に励むガキが付けてるのやら、知識人がしっかりと書き留めているのやら。 だがあいつは一体どんなことを書いてるんだ? とてもこの遺跡を研究してそれを記録しているようには見えない。 となると自分の戦闘結果ぐらいしか記録することはないはずだ。 もしかしてあの赤い髪は自分の伝記でも作ろうとしてるのか? つくづく雑魚っぽいぜ。 本当に伝記になるような奴はわざわざ自分から記録なんて残さないんだよ。 名前が轟くような奴らは自然と各所から業績が集まっていくんだからな。 それが適当に混ぜ合わさって初めて一つの物語に変わるんだ。 ところが本人が残した日記なんて所詮ただの日記。 混ざる物もないからそれで終わっちまう。 第一、完全な『ただの記録』なんて面白みもないだろ。 ある程度誇張された物語の方が残りやすいんだ。 人間がどんなのを残すかなんて詳しくはしらないが、大体そんなモンだろ? とはいえ、本人が誇張しまくって日記を書くのはなしだよな。 ほら、狼一匹やっつけたのを群れを撃退したと書き残すとか。 誇張された物語の方が残りやすいとはいえ、自分でそんなの書くのはただの変人だ。 あいつがそんなことを書いてりゃ雑魚の鑑として笑ってやりたい。 一体どんなことを書いているのかと思ってみてみたんだが、どのページも真っ白じゃないか。 なんだなんだ? 三日坊主どころか一日も書いてないって事か? それはないよなぁ。毎日ごそごそとやってたんだから。 もしかしてあいつ、字が書けなかったりするのか? まさかなぁ。書けないなら書くふりだってしないだろう。 自分はこんな事も出来るんだぜって俺達に虚勢を張りたかったのか? それじゃ雑魚所か稚魚じゃないか。小さすぎるぜ。 もしかして、書くものがないから筆圧で紙をへこませて記録してるとか? どっからどー見ても文字を書いた後なんて見えないよなぁ。 第一そんな意味の薄いことをするぐらいなら諦めるはずだよな。 ならあぶり出しか? 何か特殊な汁で書いて、他人から見られないようにしてるのか? 日記にしちゃ厳重すぎるだろ。 あぶり出す道具が無いから確認できないが。 もうこの際あいつは文字を書けないってしとこう。虚勢張ってたってことで。 それが一番あり得る。 人間だからって文字を書かない奴もいるんだ。 文字を書かなくても意思が伝達できりゃいいんだからな。 でもよ、それじゃあんまりにもこの日記が可愛そうだから、俺がちょっと書いといてやるぜ。 やっぱこういうのは使われてなんぼだよな。 そうだなぁ。とりあえず今までに潜ってきた魔法陣の模様でも写しとこうか。 あいつらは何も考えずに歩いてるみたいだが、きっともう魔法陣がどんな形だったか何て忘れてるんだろう。 もしかして記憶力に自信があるのか? あいつらだってそんなにいつまでも覚えてられるモンじゃないはずだ。 俺の頭でだって二個覚えるのが精一杯なんだぜ? 自分の頭に陶酔してるんじゃないだろうか。そのうち忘れて大変なことになるぞ。 そうだ。俺だって次の魔法陣に着いたら忘れちまうんだ。 この際だからここに模様をメモしておこう。 あいつらが計画的な俺に感謝する姿が目に浮かぶぜ。 (ミミズののたくったような歪な模様で、 始まりの右足と石の演劇の魔法陣が描かれている) 人間や猫にはこういった計画性ってのが無いのかねぇ。 行き当たりばったりに動いていいのは砂の中だけだぜ。 土の上を歩くならもっと考えて動けっての。 しかし俺も遠くまで来たもんだ。 平原が砂地とはこんなに違ってたなんて、考えもしなかった。 こんな妙な緑のもんが地面を覆ってるんだなぁ。 何だか気味が悪いぜ。中には緑のデカイのが歩いて足りするしな。 あの気持ち悪いのはいったい何なんだ。モサモサしてて邪魔なことこの上ない。 地面の中も進みにくい。 ちょっと進めば石ころに当たって痛い思いをさせられる。 俺の甲殻の欠けた部分は特にだ。 あの赤い髪に甲殻さえ取られなければ、こんな思いはしてねーのに。 俺の甲殻が完璧な状態だったらそんな石ころ跳ね飛ばしてるだろう。 あの戦いは思い出しただけでもいらいらしてくるぜ。 雑魚は雑魚らしくやられてりゃいいのに、何で二匹でくるかねぇ。 あいつら数のおかげで俺に勝っておきながら、俺の自慢の甲殻まで取っていきやがったんだ。 俺はもちろん追いかけたぜ。 砂の中を、土の中を、とにかく前へ進んだんだ。 そしてあいつらに追いついて、隙をうかがって甲殻を取り返すつもりだったんだ。 それが あいつ 俺の 俺の甲殻を! つい興奮して日記帳をぶっ飛ばしちまった。 別にあいつの持ちモンだし壊れたって構わないか。 今までは甲殻を取り返すためにおとなしくしていたが、 それが叶わない今、あいつらに従ってる義理もない。 そうだ。俺だって甲殻を奪われたんだ。 あいつらの持ち物の一つや二つ壊したところで罰は当たらないだろう。 そもそもあいつらの持ち物なんて殆ど強奪品だろ? そんな物は壊れてしまって当然なんだよ。 まともな手段で得た物じゃないんだ。 壊れるときだってまともな理由じゃなくて構わないはずだ。 そう、あの甲殻は俺の命と言ってもイイモノだったんだ。 昨日も得意げに振り回してやがったが、あれは人間の武器になんか成って良いモンじゃない。 この苦しみと同等の破壊なんて不可能だ。 だったらそこら辺にあるモンを全部ぶち壊してからずらかるとしようじゃないか。 これが俺に出来る、最大限の復讐だ! (対象:ガルドン) 全く、不用心にも程があるぜ。 あいつらはどっかに行ったきり、戻ってこねー。 一体いつの間に俺はそんな信頼を勝ち取っていたのやら。 ただそこで戦っただけでもらえるなら、あいつらの信頼なんて安いもんだ。 だがな、そんなんじゃこの先は生き残れねーんだ。 俺が教訓を与えておいてやるよ。 仲間を簡単に信用するなって教訓をな。 さてと、あいつらの荷物をぶち壊しにかかるか。 どーこだったかな、と。 見つかった見つかった。 いやぁ、冒険者ってのは良いね。荷物を纏めてないと移動できねーんだから。 あちこち探し回る手間が省けるぜ。 とりあえず薬とかは割れやすくて良いよな。 あー、良い音立てて割れてくれるねぇ。 これじゃもう使いモンにならねーなぁ。 これは昨日の狼の牙か? んだよ。元からヒビが入ってんじゃねーか。 こんなモン俺の重みでボロボロだぜ。 肉なんて俺の残った甲殻でズタズタだな。 どれもこれも脆いモンばっかじゃねーか。 壊しがいがねーなぁ。 わざわざ俺が動かなくてもそのうち壊れたんじゃないか? ん? あー、武器がなくなったらあいつも少しは困るか。よし、壊しとこう。 くそ、俺の甲殻製のを今あいつが持ってるのが残念だ。 虚しいぜ。 どれだけ壊しても俺の甲殻は戻って来ない。 なのに俺は壊すことしかできねぇ。 虚しすぎるぜ。 辺りに散らばったいろんなものの残骸が余計に俺の心を虚しくしやがる。 だけどよ、これだけ壊せば……あいつらだって平気な顔してられねーだろよ。 俺のこの虚しさ、一口でもいい。味わいやがれ。 さて、と。そろそろここから逃げねーとな。 あいつらが戻ってきたときにはち合わせたら大変だ。 そうだな。この日記帳に「ガルドン様参上」とでも書いとくか。 そうすりゃ俺の仕業だって事が分かるだろ。 きっとあいつら俺を連れてったことを心の底から後悔するぜ。 あ? なん、だ? これは? 俺の考えたことが書き加えられて…… あぁ、思い出したぜ。レィレからあんたのことを聞いてたんだったな。 俺にゃ関係のない話だからすっかり忘れてたぜ。 あんた、あれだろ? 日記帳に潜む妖精さん? そういうと聞こえが良すぎるか。 日記帳の形でカモフラージュして、こそこそと生きながらえてるんだろ? ミミックとかそんな感じの。 雑魚っぽいなぁ。雑魚よりも酷いかも知れねぇ。 堂々と表舞台に出てこないくせに、ちゃっかり干渉はしてやがる。 誰からも敵対されないように生きながら、あんたは誰からでも吸い取れるってのか。 狡い生き方だねぇ。 俺はそう言う奴が嫌いだぜ。 俺の言葉が吸い取れるなら反応してみろよ。 何だだんまりか? おい、早く反応しねぇとボロボロになっちまうぜ? 調子のいいときの俺は怖いぞ? 気が付いたら紙屑が辺りに散らばってるかも知れねーな。 あんたが集めてきた文字も全部ばらまかれ――あ お前 何 止め 俺が こんな雑魚に PR |
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