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FalseIslandという定期更新型ゲームに参加中の、リコ・メルシェ(1227)の日記の保管とかPLの戯言とかです
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騙すモノ騙されるモノ



「おで、つよい!」

 話にならなかった。
返ってきた訳の分からない自信に、グラスレイは再び頭を抱えた。
どれだけ交渉しても返ってくるのは変てこな言葉。
どれだけ説明しても返ってくるのは奇妙な元気。
どれだけ脅してみても返ってくるのは無邪気な笑顔。尤も、悪魔の笑顔に愛嬌など湧かなかったが。
とにかく話にならなかった。

「グラスレイさん、私に任せていただけませんか?」

 そんな折、彼の隣をレィレが歩いていった。
その口には何か透明なものがくわえられている。
一体何を持ってきたのかとそれを眺めていると、その袋は小悪魔の前に置かれた。
そこでようやくその透明なものが何なのかはっきりとした。
セロファンの包みだ。
包みの口の部分には黄色いリボンがかつての形を無くしてへしょげている。
元々、その包みにそんな装飾はついていなかった。
 それは遡ること数日。
ホワイトデーでのお返しとして送るときに、袋に入ったただけというのも味気ないだろう、
などと言った理由から、リボンを付けることになったのだ。
黄色いリボンは、その試験用。
本物と似たような袋に小石を詰め、いろいろな結び方を試したのだった。
 これでもグラスレイは手先の器用さには自信があった。
伊達に植物や鉱石から装飾品を作り出しているわけではない。
生半可に実力があるため、適当な結び方ではなかなか納得出来なかったのだ。
結局の所、題名が付けられそうな結び方ですね、
などとレィレに笑われたために普通の結びにすることになったのだが。

「この袋、実は私達についてくるとクッキーが現れる魔法の袋なのです」

 少なくとも、そんな付加をその袋につけた覚えはなかった。
子供でも分かるような嘘。
そんなモノで小悪魔がだませるはずがない。
いくらあんな顔をしていても、多少の知能はあるのだから。
実際、その小悪魔は訝しげに袋の中に手を入れていた。

「あなたもこの島に住んでいればご存じかも知れませんが……
 この島には、ある技があります。
 そう、そこにあるはずのないアイテムを具現化する能力が」

 それはグラスレイも聞いたことがあった。確かファンティンとかいう技だ。
つい最近見つかった技だそうだが、そんなものを取り出してどうしようというのか。
彼女が何をするのか、その行方を見守っていると、ふとグラスレイの方向を振り返って彼女は言った。

「実はあの狼、昨日丁度その技を習得したところなのです」

 初耳だった。
一体いつからこの狼はそんな能力を手に入れたというのか。
というか、勝手にそんな技を使われたらかえって厄介だ。
グラスレイの荷物はそれほど多くのモノを持ち運ぶことを想定していない。
そのため、戦闘ごとに無駄なアイテムをぽんぽん出されたらかえって迷惑なのだ。
そんな風に焦っていると、こほんと一つ咳払いをして、そのリリューテルが隣を通り過ぎていった。

「そう、です。血の、にじむような努力の末、私は、なんと、この……」

 その口調はまるで壊れかけたゴーレムを彷彿とさせた。どう考えても役者の選択を間違えている。
尤も、そのおかげで嘘だと言うことが分かったので、グラスレイは内心ほっとしていたが。
しかし落ち着いたのも、今度は何かとてつもない殺気が飛んできた。
それが目の前のリリューテルに向けられたモノだと分かり、グラスレイはレィレの作戦が失敗したことを悟った。
そもそも何でこんな奴に嘘をつかせようとしたんだ?

 気まずい雰囲気が辺りを包んだ。
レィレは体毛を逆立てて、リリューテルの体は完全に固まっていた。
猫に睨まれた狼でも、普通こんな反応はしないよな。
すでに小悪魔の勧誘を諦めていたグラスレイはのんびりとその光景を見ていた。
 そもそも、何か一つのことを複数人で行う場合、敵の実力以上にまず味方の能力を知らなければならないのだ。
レィレの場合、敵があの小悪魔だから、多少粗のある嘘でも大丈夫だと判断したのだろう。
その点はグラスレイも何となく理解できた。
それ以上に、後半からは実際彼自身も騙されかけていたというのもあったが。
尤も、それはリリューテルの性格から嘘などつけないだろう、という先入観があったからかもしれない。
実際の所その先入観は合っていたのだし。
 レィレのミスはあまりにリリューテルの演技能力を考えていなかった所だろうか。
もしかしたら、打ち合わせた段階では上手かったのかも知れない、
だが、本番でこうなってしまえば何にしても使えない。
レィレは嘘で相手を囲むのは長けているかも知れないが、仲間を使うことは苦手らしい。
 それにしても、この空気は一体いつまで続くのか。
余りこのような場所に居続けるのも気分が良くない。
グラスレイがそこから離れようとしたとき、小悪魔の叫びが轟いた。

「ばずい!」

 こちらの態度に苛ついて何か魔法でも唱えたのだろうか。
そう思って慌ててグラスレイがそれを確認したときには、
すでにあの黄色いリボンも、透明の袋もそこには存在していなかった。
そのかわり、彼の口がもごもごと動いている。
彼はまずい、と言いたかったのだろうか。
どうやら、嘘をつく以前に言葉が通じていなかったらしい。

「諦めた方がいいんじゃないか? こいつの勧誘」

「……かも、しれませんね」
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